Detail of Me
Year: 2024
Type: exhibition
Overview
本作は、アートギャラリー NEORT++(ネオルトツー)を運営する NEORT が企画した、アジア各都市を巡回する「dialog() -Asian Generative Art Exhibition 2024」と冠されたジェネラティブアート展への参加作品である。
私たちは、px_perimentという名義(その後、Every Subpixel Mattersに改名)で、二つの正方形のディスプレイに、それぞれ異なる低解像度で来場者を映し、手元のコントローラーで異なる解像度や文字や顔文字で敷き詰められたエフェクトを切り替えながら、自分自身を撮影できる「Detail of Me」という作品を企画、制作した。
本展は同一キュレーションのもと、2024年8月に東京、10月に台北、11月にソウルを巡回開催された。各都市から総勢40名のアーティストが参加し、それぞれの実践に内在する方法論、文化的背景、技術的アプローチの差異を可視化する構成が試みられた。

Approach
アジア文化に根ざした展覧会の文脈を踏まえ、「Detail of Me」は、自己像を撮影し加工できる写真機文化、とりわけプリクラを参照点として制作した作品である。被写体としての〈自分〉が装置を介して変換・演算されるプロセスに着目し、その操作性と視覚的変容を作品構造へと転換した。
鑑賞者は、写し出された自己像を異なる情報の粒度で見比べることになる。解像度や色面の分解度が変化することで、像は身体としての姿と、カラー・ピクセルの集合体とのあいだを行き来し、自分が「人」として認識される境界を体験することになる。同時に、気軽に抽象化された自分の姿を楽しめる装置として機能することも意図した。また、その体験が鑑賞者同士の会話や交流へと自然につながるよう、展示や撮影の仕組みも設計した。
手元のコントローラーには、解像度や文字・顔文字などのエフェクトを切り替えるボタンと撮影ボタンを備えた。撮影すると、4種類の異なる解像度で生成されたシート画像が左側の縦長ディスプレイに表示される。シートにはQRコードが付与されており、鑑賞者は自身のスマートフォンで読み取ることで、その場で画像を保存できる仕組みとした。表示されたシートはゆっくりと上方向へスクロールし、画面から流れ去ると再び表示されることはなかった。デジタルでありながら永続的に残る記録ではなく、その場でしか出会えない一瞬の記録として楽しめるよう演出した。

Experiments
本作の構成は、来場者をリアルタイムで映し出す正方形ディスプレイ二台と、その左側に配置した撮影画像表示用の縦型モニターから成る。二台の正方形ディスプレイのあいだには、視認性を抑えたコンパクトなウェブカメラを設置し、装置の存在感を極力排した。
ディスプレイ手前には、腰高程度のスタンド上に専用コントローラーを配置。上下ボタンにより表示解像度を段階的に変更できる設計とし、左右いずれの画面も連動して一段階ずつ粗くなる仕様とした。ただし常に両者の解像度には差異が生じるよう制御されており、片方がより粗く、もう一方がより細かい表示となる。これにより、同一の像が異なる情報の粒度で同時提示される。中央のボタンを押し込むことでシャッターが作動し、表示中の映像を撮影。加えて、左右ボタンによりパターン・エフェクトを切り替えることが可能である。
撮影された画像は左側の縦型モニターに転送され、同時にQRコードが生成・表示される。来場者はそのQRコードを自身の端末で読み取ることで画像データを取得し、体験を持ち帰ることができる仕組みとした。装置内で完結する視覚体験を、個人のデバイスへと接続することで、展示空間と私的空間を横断する構造を形成している。

Findings
本作では、映像を意図的に粗いピクセルへ分割し、その構造を強調して提示するため、縦横比が等しい表示面が不可欠であった。一般的な16:9や16:10の横長ディスプレイでは、グリッドの均質性や画面内の構図バランスが損なわれ、意図した視覚効果が成立しない。しかし、正方形アスペクト比のディスプレイは既に市場からほぼ姿を消しており、現行製品としての選択肢は極めて限定的であった。結果として、本作は表示アルゴリズムの設計のみならず、特定の物理的フォーマットを持つハードウェアを探索・確保するプロセスそのものを含む制作となった。
また、当初、撮影画像の出力には感熱紙プリンターの使用を想定していた。しかし、常時の運用管理が必要となる点、ならびに東京・台北・ソウルを巡回する展示計画全体を勘案すると、用紙交換やメンテナンスの負荷は無視できない課題であった。
そのため最終段階で仕様を変更し、撮影画像をディスプレイ上に表示すると同時にQRコードを生成・提示する方式へと移行した。来場者はその場でコードを読み取ることでデータを取得できるが、表示は一定時間のみで更新される。すなわち、画像とQRコードは常時保存されるアーカイブではなく、その瞬間にのみアクセス可能な一時的出力として設計されている。
結果として本作は、物理的なプリントを持ち帰る体験から、時間的制約のあるデータ取得体験へと性格を変えた。保存性や恒久性よりも、短命な一瞬を切り取る装置として機能する点において、当初想定とは異なるが、本作の主題である情報の粒度と可変性をより強調する構造になったといえる。
本展のコンセプトである「dialog」に呼応するかたちで、参加アーティストとの実質的な対話が生まれたことは、本プロジェクトの大きな意義のひとつである。とりわけ台湾会場では、参加アーティストのeziraros氏による多大なサポートを受けた。作品の起動や展示記録の補助に加え、深夜のZoomを通じた継続的な対話は、制作背景や技術的思想を共有する貴重な機会となった。
本展は、来場者との関係性のみならず、アーティスト同士のコミュニケーションそのものが有機的に立ち上がる構造を内包していた点においても特筆すべきである。参加作家の多くは国際的に知られた存在であり、そのなかにあって、自身とはアプローチも文脈も異なる作品を提示できたことは得難い経験であった。
こうした機会を実現してくれた NEORT の運営陣、ならびに共に展示を構成したアーティストたちへの感謝は尽きない。本展は単なる巡回展示ではなく、都市を横断しながら対話を生成するプラットフォームとして機能していた。 (T.Y.)

Making Of









Credits
企画・制作: Junichiro Horikawa, Sonoka Sagara, Taro Yumiba
展示企画: NEORT
Published: 2026-01-18, Last updated: 2026-07-10