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Every Subpixel Matters Exhibition

Every Subpixel Matters Exhibition

Year: 2023

Type: exhibition

Overview

2023年10月、東京・富ヶ谷のCONTRASTにて初めての個展「Every Subpixel Matters」を開催した。本展は、macOS 10.13 High Sierraまで採用されていた「サブピクセルレンダリング」技術に着目した展示である。
コンピューター画面上の1ピクセルは、赤・緑・青(RGB)の微細なサブピクセルによって構成されている。かつてはこれらの色差を利用することで、低解像度ディスプレイ上でも文字を滑らかに知覚させる技術が用いられていた。しかしRetinaディスプレイの普及に伴う高解像度化によって、その仕組みは次第に不可視化され、意識されることは少なくなった。
機能としての役割を終えた「過去の技術」を再解釈し、ピクセルという最小単位のディテールへの偏愛を出発点として、デジタルとフィジカルの両領域を横断しながら、新たな文字の視覚表現を再構築した。
本展で展開された一連の作品および試みは、サブピクセルという極小の構造に改めて焦点を当てることで、解像度、色彩、知覚の関係性を再考するものである。

Every Subpixel Matters Exhibition Visual
Every Subpixel Matters 展示のメインビジュアル
Exhibition Overview Video

Approach

本展の会場であるCONTRASTは、築45年の建物の躯体をベースに「再構築」というコンセプトのもと改修された空間で、地下・1階・2階の3層で構成されている。本展示では1階と2階を使用し、2つのフロアがゆるやかにつながる構造を活かして作品を配置した。通りに面した大きな開口部からは、外部からでも空間内部と2階の一部を見渡すことができる。

1階では、開放的なCONTRASTの空間特性を活かし、独自ツールによってディザリング処理を施した Subpixel Dithering Printings を壁面いっぱいに配置。作品群は外へと続く路地からも俯瞰可能な構成とし、内部と外部の視線が交差するインスタレーションとして設計した。

中央の什器には、3Dプリントによるサブピクセルの立体キューブ とリソグラフポスターを展示。 奥の壁面には8台の小型液晶ディスプレイによるサイネージ作品を設置。サブピクセルキューブで構成された時計となっており、毎秒ごとにキューブが回転して文字が変わる仕組みになっている。

また、2階へと視線が抜ける大きな開口部の先には、本展の中心作品 “SubpixelGPT” を配置。生成された文字、単語、文章がサブピクセル構造へと変換され、リアルタイムに壁面へ投影される様子を、1階からも視認できるよう設計した。

空間全体を通して、物質としてのRGBと、発光体としてのRGBが同一空間内で対峙し、サブピクセルという最小単位の構造が、平面、立体、発光体、生成テキストへと拡張される構成となっている。

Every Subpixel Matters Floor Map
展示のフロアマップ
exhibition_statement
展示のステートメント (ハンドアウトより)

Experiments

0. Process Book

展示にあわせて制作した、これまでの活動やリサーチをまとめた副読本的な一冊。実験的な試作の記録やメンバー同士の対話も収録している。(詳細はこちら

Every Subpixel Matters Process Book
展示のプロセスブック


1. Subpixel Dithering Printings
古いMacのブラウザで採取した、サブピクセルレンダリングによる小文字サンセリフの “a” をベースに、Houdiniで独自開発したディザリングエフェクトツールを用いてポスターシリーズを制作した。ポスターには、異なる解像度のディザリングを8段階で適用している。

最も粗い解像度のポスターは横幅5px、最も細かいものは横幅250pxをベースとしている。

ディザリングとは、ディスプレイの表示に制約があった時代に、限られた情報量の中で滑らかな階調を表現するために用いられた手法である。サブピクセルと同様に、高解像度ディスプレイが普及した現在ではほとんど使われることのない技術だが、両者の技術的背景を持つ表現を意図的に組み合わせることで、現代にも通じる新たな表現として展開した。

subpixel dithering printings
サブピクセルアルファベットがditheringされた印刷ポスターと展示入り口案内
subpixel dithering printings
サブピクセルアルファベットがditheringされた印刷ポスター群

2. 3D-printed Cube Subpixel Trials
複数の面に、色面のレイヤーによって構成された文字が見える立体の3Dプリント・サブピクセルキューブ。

ミマキエンジニアリングが最近開発・発表した透明度の高いクリアインクを用い、さらに時間と手間をかけて各面を丁寧に磨き上げることで、極めて透明度の高い立方体を実現した。

その内部には、文字が空間に浮遊しているかのような表示が現れ、サブピクセル構造による文字表現をフィジカルな立体として成立させている。 (詳細はこちら)

3D-printed cube subpixel trials
3D印刷されたsubpixelキューブの試作、展示会本、リソポスター


3. 3D Subpixel Cube Clock
8台のRaspberry Piとディスプレイを活用した、時計のサイネージ。複数面に数字が表示された、立体のサブピクセルキューブの動画を用いて、30秒間時刻を刻んで時計となり、30秒間自由な角度にキューブが回転し、また時計に戻る仕組み。この文字が持つ特性の規律性と表現を両立した。
起動時にWi-Fiで時刻サーバーにアクセスし、一本の動画のシークエンスを変え擬似的に時計を再現することでタイミングを合わせる。低コストかつ無線で実現を可能にした。 (詳細はこちら)

Subpixel Clock


4. Process Movie–Behind the Scenes Introducing a Collage of Zoom

活動を記録したZoomミーティングのコラージュや、プロセスブックをの中身をハイライトで紹介。

Process Movie
Process Movie


5. Process Movie–Dithering App Movie

カスタムのディザパターンを適用できるディザリングエフェクトアプリ (詳細はこちら) の使用シーン。

dither app
ditheringツールアプリ


6. SubpixelGPT
サブピクセルの立体キューブのX・Y・Z面に、ランダムなアルファベットをプロットし、その文字を使った単語、その単語を用いた文章を、ChatGPTのAPIを介して生成する作品。単語や文章として、キューブが回転しても、別の意味が成り立つように配置されているという仕組み。結果として、三面分の情報量を持った新たな文字表現を可能とした。
展示では、什器の上にRGBカラーの三つのボタンとツマミのコントロールが可能となっており、前者は単語と文章の生成に関して、色に紐づくプロンプトを任意に追加し、後者はキューブのパースペクティブを連続的に変化させることができるコントローラーである。
一文字ー単語ー文章という一連の表示が終わるごとに、表示される文字の解像度がランダムで変化し、より抽象化されたピクセルと読めるくらいの解像度を行き来することで、図形か?意味か?、認知の境界を問いかける作品である。

SubpixelGPT
SubpixelGPT 文章が生成され、表示されている時
SubpixelGPT
SubpixelGPT キューブが回転して文章が入れ替わる時
SubpixelGPT
SubpixelGPT 一文字表示時の様子
SubpixelGPT Exhibition Image
SubpixelGPT 一展示の様子


7. Subpixel Cube Signs

展示のために制作した、RGBのアクリルキューブサイネージ。

subpixel cube signs
subpixelキューブのサイネージ

8. Subpixel App (Type Tester)
3D Subpixelキューブを実際にタイピングして文章を作ったり、回転させたり、アニメーションさせたりする自作ツール (詳細記事はこちら)。

subpixelキューブをタイピングできるテスターapp


9. Exhibition Visual

告知用に制作したデジタルポスター。キューブがゆっくりと回転している様子がループしている。

展示告知モーションビジュアル
展示用グッズとして型から制作した自作のRGBトートバッグ

Findings

実は展示前の約2年間、まとまりきらないままの試作や制作を断続的に続けていた。そんな中、ある日のグループミーティングをきっかけに「初めての個展をやろう」と決め、会場を押さえ、その空間に収まる作品構成を考えながら、さまざまな試作を展示作品としてまとめ上げていった。メンバーそれぞれに本業があるため、制作は主に平日の夜や週末の限られた時間を使って進めた。しかも、ガントチャートもタスクリストもないままに。

その結果、展示準備と作品制作そのものに追われ、正直なところ広報活動にまで十分な時間を割くことができなかった。というより、広報の重要性そのものをすっかり忘れていた。それにもかかわらず、テーマ自体も非常にニッチで実験的な内容であったにもかかわらず、会期中には約200名もの方々に足を運んでいただいたことは、本当にありがたく、大きな励みとなった。

会場では、サブピクセルやアンチエイリアスについて来場者の方々と多くの会話を交わした。「懐かしい」と当時のディスプレイ環境を振り返る方もいれば、そうした技術そのものを知らない世代の方もいる。同じ展示であっても、その見え方や受け取り方は人それぞれであり、その違いを含めて非常に興味深かった。世代やバックグラウンドを越えて多くの方々と対話できたことは、この実験的な試みを続けていくうえでの大きな励みとなった。(T.Y.)

展示を通じて生まれた来場者の方々との数々の対話やフィードバックは、その後の活動を後押しする大きな原動力となっている。 (J.H.)

チームの好奇心を起点に、さまざまな方に技術協力やアドバイスをいただきながら、学び、試し、形にしていく過程そのものが部活動のように楽しく、気がつけば2年以上続く活動になっていた。展示というひとつの形にまとめたことで、多くの方に見ていただき、フィードバックをもらえたことは、自分たちの取り組みにひとつの章をつくり、これから先へ進む力にもなった。
また、実験としてつくることと、販売できる作品をつくることの間には、大きなハードルがあることも大きな学びだった。 (S.S.)

exhibition_otherphoto1
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Credits

企画・制作: Horikawa Junichiro, Sonoka Sagara, Taro Yumiba

3Dプリント協力: ミマキエンジニアリング

3D出力物加工: 有限会社三幸

UV・レーザーカット協力: FabCafe Tokyo

施工: 東京スタデオ

会場: CONTRAST

Published: 2026-01-21, Last updated: 2026-07-24

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